ASEAN向けに最適なオンライン決済を。タイ発FinTechスタートアップ「Omise.co」

 

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今後見込まれる東南アジアのEC市場の規模拡大に向け、東南アジア向けにオンライン決済におけるAPIシステムを様々な言語でディベロッパーに提供することを可能にした「Omise.co」を創業者した長谷川潤CEOにインタビュー。

2015年1月のタイ商業開発局の発表によると、タイにおけるECの市場規模が2016年には現在の1.5倍に当たる1兆バーツ(約3兆6,000億円)に達すると予測された。今後のECの市場規模が期待されている一方で、迅速に対応しなければならない問題がある。オンライン決済における煩雑性だ。

実は、タイではデビットカードやクレジットカードの所有者の割合は多く、一人あたり5枚所有している割合も決して少なくはない。しかし、レストランやモールといったオフラインの場でしか頻繁に利用されておらず、オンライン決済の利用を目的とした利用者は、カード保持者全体の2割程度という低い結果が出ている。

しかし、今後ECの利用者の数は間違いなく増加する。その一方で、オンライン決済における問題点も早急に対応していかなければ、その思いで自社のサービスをECプラットフォームから一転、ペイメントゲートウェイへと転換した起業家がいる。Omise.co CEOの長谷川潤氏だ。

ーまず、Omiseについて教えてください。

Omiseはタイにおけるペイメントゲートウェイサービスです。簡単に説明すると、オンラインショッピング時のクレジットカードの決済処理を効率化させ、個人情報を安全に保存するといった機能を担っています。それと同時に、顧客の個人情報保護の観点から、高い安全性を確保し、信頼性の高いドキュメントや決済処理の遂行をするためのシステムの実装及び、そのアップデートも欠かせません。

現在、ペイメントゲートウェイサービスはオンラインビジネスの場では欠かすことの出来ない重要な役割を担っており、ウェブかモバイルベースかにも柔軟に対応する必要がありますが、Omiseでは独自のライブラリを持っているので、ディベロッパーの好みに合わせて柔軟にサービスの提供ができます。

オンラインペイメントは正しく、適切であることが必須条件で、一部の人向けに特別にする必要はありません。誰でも気軽に利用できるように、このコンセプトが一番大切だと考えていて、わたしたちは極力、サービスをシンプルにするように努めています。たとえば、Omiseの利用手数料は決済取引ひとつにつき3.65%と設定しており、前払い制や繰り返し支払い続けるといった煩雑性はありません。

 

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Omiseのサービスとしての具体的な特徴はなんですか?

Omiseのサービスのカギとなる特徴は大きく3つ挙げられます。

「White-Label」これはエンドユーザーにOmiseの機能を使っていると知られること無く、サービスの提供が可能になる機能です。具体的にエンドユーザーが利用しているウェブサイトやモバイルアプリケーション上で全体の決済処理が完了する仕組みになっています。なので、EC運営側はサイト上でのユーザーエクスペリエンスにいたるすべての行動を管理、分析できます。

「Fraud-Detection」Omiseの最新の不正取引防止システムは5000ものパラメータを使用して、すべての顧客の取引と行動を査定しています。また、それらのデータは常にわたしたちのシステム上に記録されるので、その情報を再利用し続けることでセキュリティーシステムの精度をあげています。

「Omise Loves OpenSource」弊社のメンバーのほとんどはディベロッパーです。その強みを十分に生かして、Omiseは複数のオープンソースライブラリを保持しています。顧客のあらゆるニーズに対応できるように、Omiseは常にシステムをアップデートし続け、最適な機能へとブラッシュアップしています。

 

Omiseをはじめる前はECサイトをローンチされようとしていましたが、なぜそこからオンラインペイメントの領域にシフトしていったのでしょうか?

ECの事業を始めようとした理由からご説明すると、タイのECマーケット規模に非常に大きなポテンシャルがあると感じたからです。事実、ローンチに向けてソーシャルコマースプラットフォームづくりを順調に進めていましたが、ある段階で大きな障壁にぶつかってしまったのです。その壁とは、オンライン決済の導入でした。

現存のペイメントゲートウェイを使用する解決策もありましたが、それを使用しても自分たちが求める最適なオンライン決済はできないと判断しました。そのことがきっかけとなり、ビジネスをECサイトからペイメントゲートウェイへと転換し、自分たちで最適なペイメントゲートウェイの開発をすることにしました。

事実、その当時投資家にこのビジネスプランを話したところ、とても興味を持たれ、シード期であったにも関わらず投資をしてくれました。

そして2ヶ月後のEchelon Thailandのピッチではローンチ前であったにも関わらず、スタートアップや一般企業から多大な興味関心を持たれました。

しかし、知名度やサービスに対する期待が高まる一方で、システム上の最も複雑な課題の対処に必死でしたね。それはPCI-DSSの証明を得ることだったのですが、最終的には証明を得る認可を獲得し、OmiseのAPIサービスはタイのペイメント市場に適応され、無事にローンチに至りました。

 

―タイのオンライン決済事情は他の国と比較して、どのような特徴があるのでしょうか?

タイにおけるデビットカードやクレジットカードの利用率は実は非常に高いです。ある統計によると、タイには5000万枚ものカードが発行されています。タイの人口は6500万人なので、これは非常に高い割合を示しています。

しかし残念なことに、カード所有率が高いにも関わらず、オンライン決済の利用者はかなり低い割合となっています。その理由として、複雑なオンライン決済よりもATMや銀行窓口の方が簡単でわかりやすいという考えが根強いということがあげられます。実際、いくつかのウェブサイトではクレジットカードの支払いを斡旋していますが、彼らは未だにペイメントゲートウェイや銀行のウェブサイトにリダイレクトをしています。更に、ウェブサイト上でクレジットカード情報は保存することは出来ないので、サービスを頻繁に利用する顧客は毎回自分たちの情報をその都度入力しなければなりません。

こういった背景もあったことから、利便性が高いオンラインペイメントゲートウェイの需要は大きかったのです。これがわたしたちがサービスを立ち上げたきっかけですね。

 

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OmiseのTokenization(DB暗号化)ライブラリ

 

―Omiseのセキュリティに対する主な施策について教えていただけますか?PCI−DSSコンプライアンスやSSL/TLS、そして不正防止策といった3つの柱はOmiseの強みでもあると伺いました。

まず「PCI-DSS」に関してですが、これは大手クレジットカード会社がカード顧客の情報や取引情報を安全に守るために、組織を結成して制定したクレジットカードのグローバルセキュリティ基準です。Omiseもこのセキュリティ基準を満たしているのですが、実はこの基準に基づく安全面の審査はとても厳格です。しかし、これを常にクリアし続けることで、クレジットカード会社からの高い信頼性を確保することが出来ます。

更に、わたしたちはエンドユーザーからの決済情報を取得する際に「card tokenization」と呼ばれる、顧客やクレジットカードの情報といったデリケートなデータが確実にユーザーのブラウザからOmiseのペイメントゲートウェイに転送され暗号化されるシステムを採用しています。これにより、マーチャントは顧客のクレジットカードの情報を見ることも、取り扱うことが出来ませんし、マーチャントのサーバにそもそもそうしたデータが送られることは決してないのでセキュリティー面で一切心配をする必要はありません。そして、先ほど少しお伝えした、不正取引防止策ですがこれはとてもシンプルです。すべての取引、顧客を分析することで少しでも不審な動きが合った場合は検知されるようになっています。この分析方法は、取引口座に5000ものパラメーターが使用されており、それらが不正取引防止の役割を担っています。

 

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―マネタイズはどの様に行っていますか?

現在はひとつの決済が終了した時点で3.65%の手数料をとるコミッションモデルをとっています。大手マーチャント等には決済ボリュームによってこの手数料は相談させていただいています。もちろん、巨額の資金の引き出しにも対応しています。目安として、引き出し処理1回に付き一律30バーツがかかりますが、200万バーツ以上の引き出しは150バーツを手数料としていただいています。

 

ーすでにタイのローカル企業でいくつかペイメントゲートウェイサービスは行われていると思いますが、競合に関してはどのようにお考えですか?またどのように差別化を図っていますか?

実際にOmiseの競合サービスはいくつかあります。例えば、バンコク県内では2C2PやPaybuyといったローカルによって作られたサービスが有名です。今後は国内勢力に限らず、海外勢の市場参入も考えられ、このようなペイメントゲートウェイサービスは増加していくことも予想しています。しかし、Omiseはこれらの競合には決して負けませんね。その理由として、先ほどお伝えしたような強固なセキュリティを始め、最新のテクノロジー技術、ユーザーサポートとその使い勝手の良さといったことがあげれらます。

また、わたしたちは複数の言語やドキュメンテーションが含まれた独自のライブラリをディベロッパーに提供しています。これによりOmiseを導入する際のディベロッパーの開発時間を圧倒的に短縮することが出来ます。事実、わたしたちはOmiseを利用したい顧客に一日でサービスを提供することが出来ます。

 

ー先日のEchelon in Thailand出場者のほとんどがOmiseのクライアントであるとお伺いしたのですが、スタートアップ、また現地の銀行とはどのようにパートナーを結んだのですか?

タイのスタートアップコミュニティはそこまで大きくありません。ほとんどのスタートアップはお互いのことを知っており、Omiseは彼らの口コミで広まりました。銀行に関しては、本当に幸運だったとしか言えず、偶然にも知り合いの紹介がきっかけでパートナーを結ぶことになりました。現在のOmiseの実績はこの人のお陰と言っても良いくらい多大な支援をいただいている人で、かなり早い段階からわたしたちのサービスにはポテンシャルがあると応援してくれました。

 

ーOmiseの社名の意味はなんですか?

日本語の「お店」です。「Omise」にしたのは、当初ECでサービスをスタートしようとしていた際につけた社名をずっと使用しているようなカタチですね。(笑)なので正式名称は実は「Omise Payment」なんです。

 

【次回は長谷川氏のこれまでの起業経験と今後の展開にフォーカスします!】

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